監視カメラシステム・入退室管理システムの企画・販売・設計・施工・導入・保守・運用
日本初のオープンキャンパスで知られる筑波大学。その一角にある医学群では、度重なる盗難・いたずら対策のため、ドア毎に入退の記録や管理を行う入退室管理システム「Net2」を導入、毎年増設を重ねている。導入担当者である同大学照井直人教授と、運営を担当する医学情報基盤室の安達氏に、Net2の使い方などについて詳しく聞いた。
― 筑波大学医学群について教えてください。
筑波大学医学群は、約2,700haあるつくば市研究学園地区の中心となる筑波大学キャンパスの一角にあります。医学に関係する学問分野である「医学類」「看護学類」「医療科学類」の三つの学類で構成され、学生数は、学部生と大学院生合わせて約1,300名です。医学群の建物は全部で8棟あり、学生の他、ドクター200名、常勤および非常勤の教員、事務員が約400名、合わせて約1,900名が建物を利用しています。
― 医学情報基盤室は何を行うところですか。
医学群全体の情報、ネットワーク管理を行うところで、一般企業で言えば情報システム部に当たるところです。
― 筑波大学医学群がセキュリティドアを導入するに至った経緯を教えてください。
オープンキャンパスである筑波大学医学群は、塀も門もありません。その上、建て増しを繰り返していたため全体のセキュリティを考えた設計になっておらず、部外者は誰でも入れる構造で、防犯上の盲点が多くありました。
実際にパソコンなどの盗難が頻発していましたし、2002年には部外者が研究室に侵入、放火し、研究室が全焼、中の機材がすべてダメになるという被害が起きました。当時は監視カメラだけ設置してある状況でしたが、犯罪が起きた肝心なところが写っていないなど十分な効果がなく、いよいよ本格的なセキュリティ対策をしなければならなくなりました。しかし、問題は予算でした。
― セキュリティ設備にはあまり予算がかけられなかったということでしょうか。
そうです。筑波大学では、各学群が独立採算制を取っています。支出は各学群の年間予算の範囲ですべてをまかなうことになっており、セキュリティ費用に限らず、臨時予算は大学からは出ません。あくまで、医学群の予算から余ったお金をセキュリティに回すしかなかったため、予算は限られていました。当然、すべてのドアに一度に導入することは難しく、まずは2~3カ所を入れてみて、その後に毎年少しずつ拡張させていくというやり方を取らざるをえませんでした。
学群内のネットワークを担当する私(照井教授)が中心となり、ドアのセキュリティ対策を行うことになりました。そこで、インターネットで検索し、数社の製品をピックアップしました。
― 複数のセキュリティ製品の中で、筑波大学医学群はKTの提案する入退室管理システム「Net2」を選ばれました。その理由は何ですか。
Net2を選んだ具体的な理由は以下です。
「一度にすべてを導入するのではなく、あとから追加できること」
当時、セキュリティドアというと、大手のセキュリティ会社による大がかりなシステムで、何千万という予算がかかってしまうものがほとんどでした。その点Net2は必要な台数だけを買い足すことが可能で、私たちの要望をそのまま満たすものでしたし、価格も手頃でした。
「新たにドアを設置するのではなく、既存のドアを使えること」
ロック部分だけを設置して導入できるため、既存のドアを有効利用できるということがポイントでした。無駄がなく、導入コストもかなり抑えられると思いました。
「バーコードに対応できること」
学生証には学籍番号のバーコードが印刷してあります。これをそのまま認証に使えるということでした※。学生証がそのまま認証カードに使えれば、バーコードのない職員にだけカードを配ればよいため、1,300名分のカード代が節約できます。
以上の理由でNet2に決定、2002年、手始めに3カ所に導入を行いました。導入してみて使い勝手がとてもよいので、翌年度末からは予算の予備費で少しずつ導入しています。
※2007年9月からはバーコードではなくICパッチで認証を行っている
― 現在のNet2活用状況についてお聞かせください。
2008年5月現在、校内への出入口に19カ所、教室7カ所、実験室6カ所、合わせて32カ所のドアの入室管理にNet2を活用しています。
1,900人の利用者がICカードまたはICパッチ(以後カード)を持ち、入室の時にドアのカードリーダーにかざして解錠、入室を行っています。特に、ICパッチはコインサイズと非常に小さく、財布やパスケースなどに入れて活用しています。
― Net2の設置環境について教えてください。
医学群にはインターネット用のLAN回線が引かれていますが、Net2はこれを使わずに専用線を引き、独自のネットワークで利用しています。これは、セキュリティ上、トラブルが起きたときにLAN回線と切り分けができるようにするためです。サーバーは専用のコンピュータ(Windows Server 2003)を医学情報基盤室に設置、管理ソフトの操作を行っており、24時間フル稼働をしています。管理ソフトはもう一台、守衛室にありますが、こちらはモニターするだけで操作はできません。
― 監視カメラも導入していますか。
Net2導入以前から監視カメラシステムが入っています。映像は守衛室ですべて見ることができます。ドアに何か異常があれば、カメラの映像を巻き戻して確認をしています。
― 毎年少しずつ台数を増やされているとのことですが、Net2を導入するドアの優先順位はどのように決めるのですか。
部屋の中に高価なものがあるかないか、これが一つの判断基準です。また、共同利用実験室など、第三者や部外者に勝手に操作をされては困る機材があるところには優先的に入れています。そういった実験室はセキュリティが重要なため、これまでも担当の先生方が自主的にセキュリティシステムを入れていたところもありました。しかし、導入当初に管理していた大学院生が卒業してしまうなど、管理者がいなくなって困っていた研究室などは、ほとんどNet2に切り替えを行いました。
― 次に、Net2の運用についてお伺いしていきます。まず、大学では毎年入学、卒業がありますが、学生に配るカードの登録や期限管理はどのように行っていますか。
学部生のカードの有効期限は、一律「新入学時から標準修業年数(医学類6年、看護学類4年、修士2年等」に設定しています。まず、教務部から新入生リストをもらって、番号と学生の名簿とつきあわせて一気にNet2に登録します。登録情報は、 カードID、学籍番号、氏名、フリガナ、学類、(大学院学生の場合は専攻)、有効期限です。毎年、大学院生も合わせて350人分の登録の作業になりますが、インポート機能を使うので半日ほどで済みます。 学生にはオリエンテーションの時に、カードの使い方や紛失時の対処などの説明を行っています。
― 教職員などの有効期限も複数年ですか。
教職員は複数年ではなく1年で、毎年年度末までを有効期限としています。非常勤講師、および研究生も同様です。翌年度も使用する場合には前年度の3月の始めから4月の間で所定の用紙を提出してもらい、延長手続きをした上での継続利用となります。
― カード紛失はよくありますか。
紛失は頻繁にあります。あらかじめ学生には、不正使用を避けるために紛失したら必ず届け出をするように言ってあります。届けのあったものは「紛失カード」という登録をしており、そこで不正使用があった場合にはシステムの警告ですぐにわかるようになっています。
― これまで不正使用が行われたことはあるのですか。
過去に一度だけ、紛失届が出ているカードが不正使用されたことがありました。不正使用がシステムで警告されましたが、あえてカードを止めずに、どのように使われるのかを観察することにしました。使用履歴と監視カメラの画像を照らし合わせて顔を確認、2~3回不正使用したところで待ち受けてつかまえました。不正使用を行っていたのは他学群の学生で、自分の学群では混んでいてなかなかパソコンが使えないので、24時間使える医学群電算室のパソコンを使うためだったという理由でした。
悪意ある理由でなかったことが幸いですが、このようにして不正使用の追跡ができることも、このシステムを入れて良かったところです。
― ドアがこじ開けられた、あるいは開けっ放しになったりしている時はどのように対応していますか。
守衛室にあるモニターで警告音が鳴りますので、守衛さんがすぐに現場に行って対応します。
― 保守はどのように行っていますか。
KT製品の保守を行う土浦の保守会社と契約をしていますので、何かあったときには対応してもらっています。
― 校内への出入口、教室、実験室と、3種類のドアにNet2を導入されていますが、それぞれのアクセス権限はどのように管理しているのでしょうか。
まず、校内への出入口ドアの入室は、カードを持つ全員ができるように設定してあります。教室や実験室についてが、そこを利用すべき人間のみにアクセス権限を付与しています。一般企業などと違い、一人一人のアクセス権限のパターンが異なり、かなり複雑であるのが大学のセキュリティの特長かもれません。
― 人によってパターンが違うと管理が大変そうですが。
アクセスのオンとオフが簡単に切り替えられますし、ユーザーグループに分けて管理することができるので、想像されるほど難しくありません。
入学試験の時にはその期間だけすべて解放にしたり、棟内のメンテナンス時には逆にすべて閉じておくなど、一時的な変更も自由にできます。新規カードの発行もすぐにできるため、他学群や他大学から講師をお呼びするときなどにも、出入口と教室のアクセス権限のあるカードをお渡ししています。
― これまでNet2についていろいろ伺ってきましたが、Net2の「使い勝手の良い点」があればお願いします。
「カスケード接続ができること」
Net2のネットワークは、どこかを基点として各ドアをつなぐのではなく、ドア同士を数珠のようにつなげていける「カスケード接続」ができます。これにより、新規に増やしていく場合でも一番近いドアから配線すればよいため、工事のコストがあまりかかりません。こういった細かな点も、徐々に増やしていくのに適したシステムだと思います。
「管理ソフトの性能がよく、進化している」
管理ソフトが年々バージョンアップしていて、使いやすくなっていることも評価できます。
私たちがとても便利に使っているため、医学群隣の「生命科学動物資源センター」にもNet2を推奨し、先日導入されました。ここは、大学全体で使う実験用の動物を飼育するところで、医学群の学生や研究員などが頻繁に出入りします。管理者もわれわれ医学群とは別にあり、システム自体も別のNet2が稼働していますが、アクセス権限を持つ者については、同じカードで出入りができるようにしました。2枚のカードを持ち歩く必要がなく、便利に利用させてもらっています。
― KTへ今後の期待があればお願いします。
筑波大学医学群では、今後もNet2の拡張を続けてより良いセキュリティ体制を目指しています。Net2と連動して問題箇所の画像を検索できる監視カメラシステムXProtectの提案を受けており、現在導入を検討しています。KTには、これからも効果的なセキュリティに関する相談に乗っていただければと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。